【川崎市環境総合研究所職員コラム】本市の熱中症状況及び予防について

令和2年7月28日

都市環境課

(川崎市気候変動情報センター 副センター長)宝田 博一

≪川崎市気候変動情報センター≫

 「昔に比べて夏の暑さが厳しくなった気がする」、「桜の開花時期、早くなってない?」、「ここのところ大雨とか水害とか増えたよね」などなど、気候の変化を感じたり、思ったりしたことはありませんか?
 近年、温室効果ガスの増加に伴う地球温暖化によって、気温上昇や短時間強雨の頻度増加など、気候に変化が生じていることが様々な観測データから明らかになっています。この変化のことを、「気候変動」と言います。
 川崎市では、市内の気候変動状況やその影響、また、「適応(気候変動の影響による被害を回避・軽減すること)」に関する情報を、収集・整理・分析し、市民や事業者の皆様に向けて発信していく拠点として、今年4月、環境総合研究所に「川崎市気候変動情報センター」を設置しました。
 当センターでは、都市化によってヒートアイランド化が進行している市内の状況に鑑み、「熱中症対策」を重点的な取組の1つとしています。今回は、梅雨明け後の盛夏が間近に迫った今、特に注意していただきたい熱中症について、昨年度の状況を交えて予防法等をご紹介したいと思います。

≪本市における熱中症による救急搬送者の状況≫

 環境総合研究所では毎年、消防局からのデータ提供のもと、市内で発生した熱中症による救急搬送に関する状況調査を行っています。これまでの調査結果によると、次のような傾向が見られています。

  • ○ 救急搬送者数は川崎区が最多(単純人数と10万人あたり人数どちらも)
  • ○ 搬送者のうち男性が占める割合は約7割
  • ○ 搬送者の半数程度は65歳以上
  • ○ 昼の12時に搬送者数はピークを迎える
  • ○ 夜7時以降も全体の2割に相当する搬送者が発生
  • ○ 搬送者の約4割は住宅を含む屋内で熱中症を発症

 今回はこのうち、いくつかの傾向について抜粋してご紹介します。その他の傾向や各年の結果については、市HP上で報告書として公開していますので、さらに詳しい内容をご覧になりたい方は是非ご利用ください。

 上の図は、区別の搬送者数状況について示したグラフです。川崎区の搬送者数が最多となっていますが、これは昨年度に限ったことではなく、毎年共通して見られる傾向になっています。
 臨海部に位置する川崎区は、丘陵部の北部地域に比べて都市化が進んでおり、人工被覆率が高い状況にあると言えます。その影響は夏季の平均気温や真夏日日数、熱帯夜日数等にも表れており、いずれも他の地域に比べて高く、多い状況が続いています。

 上の図は、時刻別の搬送者数と平均気温の推移について示したグラフです。それぞれのピークについて注目してみると、平均気温は14時台となっていた一方、搬送者数は12時台となっています。この傾向も、ほぼ毎年見られているものです。気温の推移は、ピーク以降の下がり方に比べて、日の出からピークまでの上がり方のほうが急になるという特徴があります。つまり、気温のピークを迎える前の時間帯、一日のうち比較的急な気温上昇が起こるこの時間帯に、体が暑さに対応できないために熱中症になってしまうということが考えられます。「まだそこまで暑くなっていないだろう」と油断せずに、時間帯問わず適切にエアコン等を使用してください。
 また、夜(日没後の時間帯)でも、熱中症による救急搬送者はゼロにはなりません。特に日最低気温が25℃を下回らない熱帯夜となるような日は、エアコン等の使用により、室内環境を過ごしやすく整えておくことが大切です。

≪熱中症の予防≫

 7月も下旬になりましたが、関東地方はまだ梅雨も明けておらず、「夏だけど今年はなんだか過ごしやすいね~」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし梅雨明け後こそが、熱中症に気を付けていただきたいタイミングです。
盛夏はもうすぐそこまで迫ってきています。本格的な暑さを迎える前に、十分な熱中症対策の準備ができるよう、ここからは予防のポイントについていくつかご紹介します。

●予防ポイントその1:暑さを避ける

 熱中症の予防は、まず「暑さを避ける」ことが重要です。できるだけ屋根の下などの日陰を歩くだけで、外出時の熱中症リスクを下げる効果が期待できます。屋根の無い場所を歩かなければならない場合は、持ち運べる日陰として日傘の使用がオススメです。女性はもちろん、最近では男性も使いやすいデザインの日傘が出てきていますので、暑さ対策として日傘デビューをしてみてはいかがでしょうか。
 また、子どもは体が未発達で体温調節が十分にできないことから、大人に比べて熱中症のリスクが高くなります。さらに、地面に近いほど体感する暑さは厳しくなるため、より注意が必要になります。日傘や帽子を使用するほか、体調の変化に気付けるよう周囲の大人がしっかり見守りましょう。
 室内であっても、暑さをきちんと避けられていなければ熱中症のリスクは高まります。高齢になると暑さを感じにくくなるため、見えるところに「温湿度計」などを置いて、こまめに室温を確認し、必要に応じて扇風機やエアコンを使用しましょう。「暑く感じないからまだ大丈夫」、「電気代がもったいない」と思わず、周りの方も声を掛けて、適切なエアコン等の使用を心掛けてください。保冷剤をハンカチやタオルで包んで、首などの体に当てて直接冷やすことも効果的です。

●予防ポイントその2:こまめに水分補給

 熱中症を予防するためには、「こまめに水分補給をする」ことも重要です。熱中症は高温多湿な環境に長時間いた際、体内の水分と塩分のバランスが崩れることで発症します。外出時などは、汗をかいて喉が渇くことで「水分補給をしなければ!」と思いますが、室内では汗をかいているという意識が無く、徐々に体の水分が失われていくため、脱水状態になりかけていたとしても気付きにくくなってしまいます。知らず知らずのうちに熱中症にならないよう、たとえ喉の渇きを感じなくても、こまめに水分補給を行ってください。また、多量に汗をかいたときは、水分と一緒に塩分も失われているため、水ではなくスポーツドリンク等で水分補給をしましょう。

●予防ポイントその3:感染症対策と熱中症予防

 今年は新型コロナウイルス対策のため、マスクを着用して外出する機会が増えているかと思います。しかし、蒸し暑い日のマスクの着用は熱中症のリスクを高めてしまいます。周りの人との距離を確認して、屋外等で十分な距離が確保できる場合はマスクを外し、適宜水分補給をするようにしてください。
 また、作業や運動を行うときには、特に注意していただき、こまめに水分補給をし、通常時より多くの休憩を取ってください。

 今年の夏は新型コロナウイルスの出現により、熱中症予防と「新しい生活様式」を両立させなければならない状況にあります。ご自身の体調に気を付けつつ、普段から周りの方々、特に高齢の方や子ども達へ声掛けなど注意をしていただき、皆さんで夏を健康に過ごしていただければと思います。

 川崎市気候変動情報センターでは、国や研究機関等からの新たな情報を収集し、市民や事業者の皆様向けに市のホームページや環境総合研究所のSNSを通じて様々な情報を発信しています。今月7月からは、国が1都8県を対象に試行として実施している熱中症警戒アラートを受けて、SNS上で熱中症に関する注意喚起も行っていきます。環境総合研究所のアカウントをフォローの上、是非、ご活用ください。

  •  なお、本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれたものであり、必ずしも当所の見解、意見等を示すものではありません。
  •  また、これまでに配信したコラムはこちらでご覧になれます。

前回配信したコラム

 前回配信したコラムは、新型コロナウィルスとSDGs的なアプローチ【事業推進課(国際連携・研究推進担当)吉田 哲郎】です。併せてご覧ください。